昔自分が行ってたイベントはいつも人でパンパンだった。酸素が薄いのなんか当たり前。でもそんなこと知ったこっちゃない。大音量の最高な音楽にやられながら酒呑んでりゃそれだけで最高だった。
そんな中での楽しみの1つが女の子。散々クラブに通ってたが、自分好みの女の子が一人もいないというのはまずない(平日を除く)。必ずいる。ただそれは『いる』というだけで、チャンスに直結するかと言えばそんなことはなく、かなり運と実力が必要な世界になってくる。
例えば、「よく見る可愛い子」は大概関係者が手を付けているし、女の子もそれをステータスとして喜んでるフシがある。まぁ当たり前だわな。クラブの中じゃ『関係者』は圧倒的にモテる。ビジュアル、学歴云々全く関係ない。『関係者』というだけで圧倒的にもてるのだ。
逆に、全くの部外者がナンパする時は注意が必要で、調子に乗って何も考えずに声をかけてりゃそのうち痛い目を見る。関係者やら彼氏やらが「お前誰に声かけてんだよ」ってな具合に詰め寄ってくる。こんなのザラだ。
そんな状況なのでゲットした子は貴重だ。たまたま同じイベントに来て、たまたま見かけて、たまたま気が合って意気投合する。人によっちゃ運命って思っちゃうんじゃないかな?自分はクラブで出会った子なんてよっぽどのことがない限りゴメンだけど。笑
今日はそんなふうに思うようになった要因の一つになった出来事を書いてみようと思う。
私のお守り
その日も相変わらず酔っ払って音楽を楽しんでた。そのイベントはツレというか、仲の良い知り合いぐらいの連中がやってたイベントなので変に構えることもなく普通に楽しんでた。
しばらくして、パッと見、自分好みの女の子が目に入ってきた。毎回そうだけど、一回目に入ると気付いたらその子を目で追いかけている。クラブの中は暗い。見てても全然不審じゃないんだよね。で、声をかけるタイミングを見計らう。
すると、その子がバーカン*1に向かうのが分かった。チャンス到来だ。
「へ~い、何飲む?」
「えっ、いいの?」
「いいよいいよ〜」
「じゃー、ジンバック!」
「ジンバック2つ!どっから来たの?」
「三重だよ〜」
「三重か〜、遠いな。笑」
そんな会話で始まって、幸い性格も良さそうな子だったので誘ってみた。
「今日一人で来たの?」
「友だちと来た。」
「じゃあ、また遊ぼうよ。三重まで行くからさ。」
「いいよ〜。じゃあ連絡先交換する?」
もうこの時点でその日が最高に楽しくなる。酒と音楽も最高だけど、女の子はもっと最高だからね。笑
結局その日は明け方までいい気分で楽しんで帰った。
<後日…>
「あーい、久しぶり〜」
「久しぶり〜!遠かったでしょ。笑」
「遠かった。笑」
でもそんなことはどうでも良かった。タイプの子と遊べるならどこまででも行っちゃう年頃だったんでね。
「どーする?どっかおもろいとこある?」
「面白いとこか〜。ちょっと待ってよ~。」
(関西弁可愛いなあ…)なんて思ってたその時、とんでもないものが目に入ってきた。
それは彼女の手首にあった傷痕。リストカットの跡なんてもんじゃない。見たこともないようなガッツリとした自殺未遂の痕だった。
しばらくは切り出そうか、知らんぷりしようか迷ったが、普通に出されている以上触れないほうが不自然だった。
「それ…」
「あーこれ?私のお守り。」
「お守り?」
「うん、これあると変な男寄ってこないから。笑」
確かにそれを見た時、「うわ~やばい子つかまえちゃったなぁ…」って思った。だって自殺できちゃう子なんて遊びでヤルのゴメンでしょ?少なくとも自分はそうだった。
その後、なんでそうなったか聞いた気がするけど覚えてない。どうやって早く帰ろうか考えてた。
人は見た目じゃわからない
クラブなんて多少心に影がある人間が集まってくる場所だとは思ってたけど、ここまでの子は初めてだったからすごく驚いた。
同時に、見た目だけじゃその人間が背負ってるものなんてわからないもんだなって実感もした。そういう意味では今思えばいい経験だったって思う。
ただ…
スゲーやりたかったけどね!
では。
※ この話はフィクションです。
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